白秋のロンドンって?

2012/08/01


白秋の作品に「ロンドン」という題の詩があります。

    ロンドン
夏の日向にしをれゆく
ロンドン草の花見れば
暑さ砂地にはねかへる
虫のさけびの厭はしや。

かつはさみしき唇に
カステラの粉をあつるとき、
ひとりとくとく乳ねぶる
あかんぼの頭にくらしや。

夏の日向にしをれゆく
ロンドン草よ、わがうれひ。
           (「おもひで」)

 「松葉牡丹(まつばぼたん)のことをわが地方にてはロンドンと呼びならはしぬ。
その韻いまもわすれず。」

詩の後に添えられた白秋の註です。
地域の先輩たちに聞くと、今でも柳川では松葉牡丹のことを「ロンドン」と言う人たちがいます。 なぜロンドンというのかはわかりません。 

『桐の花』にも松葉牡丹を指す「ロンドン」の出てくる数首があります。

 ・いと高き君がよき名ぞ忍ばるる赤きロンドン赤きロンドン
 ・ロンドンの悲しき言葉耳にあり花赤ければ命短し
 ・狂ほしく髪かきむしり昼ひねもすロンドンの紅をひとり凝視(みつ)むる
 ・縫針の娘たれかれおとなしくロンドンの花を踏みて帰るも

松葉牡丹という漢字4字やひらがな6文字で表すより、ロンドンという4字のカタカナで、しかも「ン」という切れのいい音が2回含まれていると、リズムがあふれ出し、
可憐さとはかなさがにじみます。
しかも、造語ではなく、白秋が育った郷里の土地言葉なのですから、
それだけでもロマンチックになります。

さて、ロンドン・オリンピック大会にちなんで、当館ではロンドン(松葉牡丹)を交えて植栽して、204の国と地域から出場する選手たちの活躍を応援したいと思います。  




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